1. 「恋愛しない若者たち」の現象
牛窪氏の調査によると、20代から30代の多くの若者が恋愛や結婚に対して、かつてのような熱狂的な意義を感じていないという傾向が見られます。彼らの多くは、恋愛が「面倒」であり、仕事や自分の時間を優先するため、恋愛にエネルギーを割くことが非効率的であると考えています。
また、恋愛がもたらす感情的なリスクや経済的負担を恐れ、恋愛を避ける傾向が強まっています。これは、現代社会の超情報化によって、恋愛に対する理想や期待が高まりすぎた結果、実際の恋愛が負担と感じられるようになったことも一因とされています(
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2. コンビニ化する性とコスパ化する結婚
牛窪氏が指摘する「コンビニ化する性」とは、若者たちがセックスをより手軽で感情的な繋がりを必要としないものとして捉えている現象を指します。例えば、恋愛を経ずに肉体的な関係だけを持つ「セフレ」(セックスフレンド)が、ある程度普及していることを示しています。
一方で、結婚は「コスパ化」されており、特に女性の間では、結婚は子どもを持つための手段として捉えられがちです。 このように、若者たちは恋愛とセックス、そして結婚を切り離し、それぞれに異なる目的やメリットを求めるようになっています(
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3. 恋愛のリスクと回避行動
また、牛窪氏は恋愛が「リスクの多い行為」として若者に捉えられている点にも注目しています。恋愛には感情的なトラブル、失敗、そして経済的負担が伴う可能性があり、特にバブル崩壊以降の不安定な経済状況の中で、若者たちはこれらのリスクを避けようとする傾向が強まっています。さらに、現代の若者は恋愛において自己責任を強く感じており、恋愛による失敗を自己の失敗と捉える風潮が強まっています(
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4. 若者たちの自己中心的な価値観と未来の結婚観
こうした若者たちの恋愛観は、個人主義の台頭と密接に関係しています。現代の若者は自己実現やキャリア、自由な時間を重視し、それらが恋愛や結婚によって妨げられることを望みません。そのため、結婚や恋愛に対する優先順位が下がり、「おひとりさま」や「独身」の生活が肯定されるようになっています。しかし、同時に、これらの若者たちも「いつかは結婚したい」という願望を持っており、結婚を完全に放棄しているわけではありません。むしろ、結婚を自分の人生設計の一部として慎重に計画しているケースが多いです(
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まとめ
牛窪恵氏が描く「恋愛しない若者たち」は、現代の価値観や社会構造の変化に適応した新しい恋愛観を持つ世代です。彼らは恋愛や結婚に対して従来のロマンティックな理想を持たず、効率やリスクを考慮して行動します。恋愛が「コスパ」に合わないと感じられる一方で、結婚や家族を持つことには依然として関心を持ち続けており、恋愛や結婚を合理的に捉えた上での選択を重視しているのです。
この現象は、日本社会の少子化や晩婚化、そして個人主義の進展と密接に関係しており、今後もさらに進化していく可能性があります。